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暗くて静かでロックな娘(チャンネー)

暗くて静かでロックな娘(チャンネー)
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彼女と出会ったのは腐った町の腐った便所。

盲目の美女ロザリンドとのロマンスを描いた表題作他、全十編の最新小説集。

「やめろ。彼女は目と耳が不自由なんだ」
バーテンの言葉に俺は抵抗をやめ、目の前の女を穴が開くほど見つめた。歳は二十代半ば、
黒髪が卵形の顔を縁取っている。化粧は派手めだが下品に感じないのは素顔がもともと派手な作りだからだ。
弓形の唇が割れると白い歯が覗いた。舌が唇を湿らせに、ちょろりと覗いて引っ込んだ。
「だって目が開いてるぜ」
「そんな可哀想な子もいるのさ」
確かに彼女は黒い杖を持っていた。便所の前の暗がりでは気がつかなかったのも当然だ。
(本文より)

著者:平山夢明
発行元:集英社
発売日:2012/12/14
ISBN:978-4087714807
平山夢明

神奈川県生まれ。「週刊プレイボーイ」、「宝島」等で映画・ビデオ批評をしながら作家活動に入る。著書に『異常快楽殺人』(角川ホラー文庫)『怖い本』『メルキオールの惨劇』(ハルキ・ホラー文庫)『「超」怖い話Α』『「超」怖い話Ζ』『東京伝説 彷徨う街の怖い話』(竹書房文庫)『ミサイルマン』(光文社)などがある。2006年、「独白するユニバーサル横メルカトル」で第59回日本推理作家協会賞短篇部門を受賞。